乳がんの性質

 

小林麻耶さんや北斗晶さんなど芸能関係の人が乳がんになったと言うニュースが広がり、乳がんについていろいろと心配されている方も多いと思います。また身近な方が乳がんにかかっていた場合、ある程度の知識を持っておられる方もおられることでしょう。

 

乳がんも他のがんと同じく早期発見、早期治療が最重要だということは間違いありません。

 

一般的に乳がんは他のがんと比べ治りやすいといえます。(もちろん同じ乳がんでも個人差はありますので、絶対ではありませんが)その理由は、乳がんの成長が遅いものが多いためです。

 

さらに手術以外の治療法(化学療法、ホルモン療法、放射線療法)が効果的な場合が多いことも乳がんが比較的治り安い理由です。

 

ただし再発する場合も時間がかかるため、他のがんよりも治った後の経過をみる期間はより長くなります。

 

 

乳がんのでき方

 

乳房内には、乳腺という母乳を作る細胞のかたまりがあります。乳腺はブドウの房のように乳管という管でつながり、乳管は乳頭に母乳を運びます。
乳がんの多くはこの乳管の細胞から発生します。乳腺自体から発生する乳がんの頻度は、案外少ないものです。

 

乳がんの特徴のひとつとして、女性ホルモンががんの増殖(増えていくこと)に 影響を与えるタイプが存在することです。(ホルモン依存性乳がん)このタイプは乳がん全体の約70%を占め、ホルモン治療が非常に効果があります。

 

 

乳がんの症状

 

乳がんの症状で一般的なものは、やっぱりしこりです。(乳房の上外側1/4が好発部位です)通常は片側で痛みはない場合が多いのですが、絶対的なものではありません。

 

特殊な症状としては、乳頭が腫瘍に引っ張られてへこんだり、湿疹ができたり、乳頭からの分泌物(血液が混じることもあります)が出たり、むくみのために皮膚がみかんの皮のように見えることもあります。

 

しかし何といっても早期発見の鍵は、普段から自分で乳房のしこりを疑い、少しでも異常を感じたらできるだけ早く乳腺の専門医を受診することです。

 

外科や婦人科の看板を上げて乳腺の診察をしている医療機関よりも、もし近くにあれば乳腺外来のみを専門に行っている医療機関をお勧めします。最近では乳腺外来専門のクリニックも少しづつ増えてきています。 

 

 

乳がんの検査

 

触診

 

もっとも基本となる検査で、乳房を手で触れて、しこりの有無、硬さ、状態などを調べます。

 

マンモグラフィー

 

しこりの有無、大きさや周囲の状態を調べます。その際専用の装置で圧迫しますが、これが結構痛いです。生理が終わった後に検査を受けることをお勧めします。

 

最近は多くのクリニックがデジタルマンモグラフィーになっているので、より腫瘍を発見しやすくなっています。

 

超音波検査(エコーグラム)

 

乳腺が発達している40歳以下の女性には、マンモグラフィーよりも向いていると言われています。

 

しこりの有無、大きさ、しこりを動かしたときの反応などがわかります。クリニックの中にはこの検査を臨床検査技師が行うところもありますが、忙しくても専門医が自分の手で直接調べるほうが確実だと思います。

 

最近では、エラストグラフィーという組織の硬さをリアルタイムで映像化できる機能のついた機種もあり、診断に役立っています。

 

病理検査

 

以上の検査で少しでも悪性が疑われた場合は、細胞や組織を一部採取し病理学的に検査を行い診断を確定します。細胞・組織をとる方法としましては、針生検、組織生検、マンモトーム生検があります。

 

もしがんが見つかった場合は、ホルモンの反応性、HER2、Ki-67といった治療方針の決定に必要な検査も同時に行うことができます。

 

 

乳がんの治療

 

今までは、まず手術でがんを切除し再発を予防するか、とりきれなかった場合は残りの腫瘍を抑えるために、薬物療法や放射線療法を行うことが通常でした。

 

現在では、ホルモンの反応性、HER2、Ki-67などを調べて、それぞれの患者にあった薬物療法を行い、腫瘍をできるだけ小さくしてから手術を行うことが多くなっています。また化学療法だけで腫瘍がなくなってしまう場合もあるのです。

 

しかし乳房温存手術を行った場合とリンパ節転移の数が多かった場合は、念のために放射線治療を追加する傾向があります。

 

 

薬物療法について

 

ホルモン療法

 

エストロゲンに反応するエストロゲンレセプターが陽性であると診断された場合、まずホルモン療法を行います。エストロゲンの生成を抑えたり、エストロゲンの働きを弱くする薬剤を使いますが、かなり効果的な治療になります。

 

また副作用も化学療法に比べるとはるかに少ないのですが、ホットフラッシュやのぼせ、骨粗しょう症などが見られる場合があります。

 

化学療法

 

いわゆる抗がん剤のことですが、乳がんは抗がん剤がよく効くと言われています。しかしホルモン療法に比べると副作用が強く、一時的に脱毛を起こす場合が多く見られます。いくつかの抗がん剤を組み合わせて使うことが多いです。

 

 

乳がんの手術について

 

治療技術が進歩してきたことにより、現在では多くの場合乳房温存手術を行います。切開する部位も目立ちにくいところを切り、欠損した部分に対しては脂肪移植を行うなどして術後目立たないような工夫がされています。

 

進行した乳がんで乳房を温存することができない場合や温存を希望しない場合は乳房切除術を行います、が以前のように大胸筋や小胸筋(胸の前にある筋肉)を切除することは、ほとんどなくなりました。

 

もちろん希望すれば、形成外科で乳房再建術を行うこともできます。

 

 

最近の乳がんの治療は驚くべき進歩を遂げています。しかし、しつこいようですが早期発見、早期治療がもっとも重要ですので、少しでも疑いがあればできるだけ早く専門医を受診されることをお勧めします。